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高度集積地区整備推進協議会・第4回総会

地域戦略としてのベンチャー振興と京都の課題

2003.4.23
塩沢由典
大阪市立大学創造都市研究科
              

(1)なぜ、ベンチャー振興なのか

マクロ経済政策の無力化
 ケインズ政策(財政出動)、金融政策(金利調整)、為替政策、インフレ政策
不況の深い理由はなにか
 構造変化(追い上げる立場から、トップランナー・追われる立場へ)
 なにを構造改革すべきか。
なぜ、ベンチャーなのか
 産業の空洞化・輸入商品との競合
 消去法による答え=>新産業・新事業を大胆に試す以外にない。

(2)長期の産業変動

農業の事例(明治初年の農業人口78%=>GDP2.6%)
製造業(就業者数は1992年1569万人が最大、過去10年間で340万人の減)
  日本:GDP構成比1961年35.1%が最大、現在22%)
  世界30カ国(1998年前後)のうち、最大は韓国の32%、第2はロシアの30%。
  ヨーロッパ、北アメリカではロシアを除くと22%のフィンランドが最大。
なぜ、製造業人口は減少するのか
  農業:食料の飽和。一人で何人食べさせられるか。一人で50人<=>GDP2%
  製造業:製品の飽和。一人で5人<=>GDP20%。生産性上昇=>製造業人口比減少。

(3)どんな産業で食べていけるか

合衆国日 本ドイツフランスイタリア
その他の経済活動5248484822%
卸売・小売、飲食店、ホテル業1614131433%
合計6862616255%

将来:広い意味でのサービス業(第4次産業)
 ソフト・映像生産、レジャー・観光、企業向けサービス、研究開発、介護・医療など
新産業・新サービスを生み出すもの=>ベンチャー(一部はCB、SOHO、NPOでも)

(4)地域戦略としてのベンチャー振興

ベンチャーが叢生するための4条件
 ・意欲的な起業家
 ・リスクを取る資金提供者
 ・V企業で働こうとする優秀な人材
 ・新製品を購入する買手
=>ハビタット(生態環境)(ファイゲンバウムとブルナー)
4つが小さな地域に高度に集積していることが必要。
 [資源をばら撒いては効果がでない。地域戦略としてのみ成功。]

(5)京都市南部の課題

京都全体
 意欲的な起業家 京都の魅力、ベンチャーの伝統、京大・同大・立命大など
 リスクを取るVC フューチャー・ベンチャー・キャピタルなど
 V企業で働こうとする優秀な人材 京大・同大・立命大など、学びたい町
 新製品を購入する買手 京セラ・オムロン・島津製作所など
京都市南部
 難点:KRP、京大(吉田・桂)、芸大から遠く 文化的中心から離れて
 利点:展開可能な面積、伏見、核となる企業(京セラ、宝酒造など)
 「他からの流入が望める」では弱い。製造業中心でよいか。
自己増殖する循環が必要。(育てられ、生み出し、育てる。)
 このメカニズム=回路をどう作り出すか。



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