2022.4.21 Googleのサービスのひとつに引用通知がある。自分の論文がどこかで引用された場合に知らせてくれる便利なものだが、今日の通知は「代作」業者のSample paperだった。
-Shiozawa, Y. (2007). A New Construction of Ricardian Trade Theory?A Many-country, Many-Commodity Case with Intermediate Goods and Choice of Production Techniques. Evolutionary and Institutional Economics Review, 3(2): 141-187. -Fujimoto, T. & Shiozawa, Y. (2012). Inter and Intra Company Competition in the Age of Global Competition: A Micro and Macro Interpretation of Ricardian Trade Theory, Evolutionary and Institutional Economics Review, 8(2): 193-231. の二本が引用されていたが、知らずに本文を読んでみたら、論文の内容とほとんど関係ないことがわたしの主張(Shiozawa 2007)として参照されていた。代作は、高校レベルからPhD論文まであるようで、この見本論文はどのレベルのものだろうか。修士ぐらいのterm paperとしてなら、指導教員がいそがしいか何人も指導している場合、専門をすこし外れれば通ってしまうかもしれない。今日はたまたま毎日新聞の「科学の森」(15面)に「国民の安全帯や巣か「研究不正」」という記事が載っている。林正男氏の「白楽の研究者倫理」というウェブ・サイトにこの3月16日に不正論文記事が1000本になったことを機会になされた鳥居真平記者のインタビュー記事だ。いろいろな不正の種が学生時代から撒かれているということだろう。トランプやプーチンのFake! にもつながっていよう。
2022.4.6 CoreEconチームの The Economy のどこに不満か。基本はBolwesの「ポストワルラシアンの進化社会科学」という構想への疑問に重なる。そのことはBowlesの『制度と進化のミクロ経済学』「訳者あとがき」に書いた。あのときはまだ「ポストワルラシアン」という形容詞の意味に半信半疑だったが、けっきょく基本はワルラスでよいが、いくつかの強い仮定を緩めていけばじゅうぶんな経済学になると考えているのだろう。 The Economy がそれを証明してしまった。
2022.4.5 ColanderがRWER 91に載せた論文にこう書いている: Economics has always had an underlying tension between two visions of economics. One is an equilibrium vision ... The other is a complexity vision... こういう視点はなかったが、指摘されてみればその通りかも。反均衡と複雑系とは深いところで繋がっていたのだ。パラレル・ヒストリーの新しいテーマでもある。
2022.2.2 Robertsonの恒等式の周辺をさぐっていたら、Hideo AoyamaのA Critical Note on D. H. Robertson's Theory of Saving and Investment (I) and (II)が期間分析の方法的諸問題についていろいろ議論していることを発見。これでだいぶ議論の種が増えた。
2021.12.3 PK研での報告のためにJ. E. King (2012) The Microfoundations Delusion を読んでいる。PKや他の異端派経済学者たちが、このテーマをめぐっていかに四分五裂していたかはよくわかったが、肝心のあるべきmicroeconomicsについての考察がまったく深められていない。
2021.11.23 今年のノーベル物理学賞は真鍋叔郎教授ほか2名でしたが、その献辞は"“for groundbreaking contributions to our understanding of complex physical systems.”でした。つまり「複雑物理系の理解に関する草分け的貢献」に与えられました。ノーベル賞が複雑系関係の貢献に与えられたのは、経済学賞のH. A. Simonに対するもの(1978)以外にはありませんでした。おかげで複雑系への社会の関心が復活してか、『増補 複雑系経済学入門』もすこし売行きが回復しているようです。