塩沢由典>著書>複雑さの帰結>大学入試センター・問題作成部会・出題意図

第3 問題作成部会の見解

http://www.dnc.ac.jp/old_data/exam_repo/15/pdf/15hyouka08.pdf

国語T

1問題作成の方針(省略)

2各問題の出題意図と解答結果

第1問
「国語T」のレベル・内容に応じた文章を取り上げた。出典は、経済学者塩沢由典氏の『人はなぜ習慣的に行動するのか』(『複雑さの帰結』所収)の一節である。内容的にほぼ完結し、かつ分量として適当な箇所を抄出した。文字数は昨年度とほぼ同じ約 4,100 字。内容は、表題に示されているように、人が習慣的に行動する理由、及び習慣的行動の構造と意義を論ずる。だれもが日常的に行いながら普段は気にもとめない習慣的行動について新たに見直すきっかけを与えてくれ、またそれを通じて人間の心理や行動に対する興味や関心を呼び起こしてくれる文章である。主題を科学的・客観的に論述し、説明的性格が強い。論理的文章として学習されるべき文章の一タイプである。専門的用語が散見され、叙述の抽象度が高く例示が必ずしも多くはないため、文章の難度は高めである。しかし、論理的構成はしっかりしており、部分の内容を押さえながら順に読み進んでゆけば全体の理解が得られる。文章の難度の高さは各設問により受験者が段階的に読解を進めて行くことで乗り越えられるよう配慮した。設問は、基礎的な漢字力のほかに、内容読解の力を多面的に問うことができるような構成とした。受験者の得点率はほぼ6割に達しており、全体としては妥当な出題であったと考える。外部の評価において、問題文の難度の高さ、及びそれに伴う解答所要時間の多さについて指摘されている。来年度以降の作題において十分留意したい。

問1 基礎的な漢字力を問う問題である。「国語T」にふさわしい語彙による出題となるよう配慮した。二字熟語の紛らわしい部分を問う形式だけでなく、訓読みの形式も出題したことに対し、良い評価を得た。正答率は、すべての設問が漢字の問題としてほぼ適切な範囲に収まったと考える。問題文による制約もあるが、今後も出題語彙の適切さ、出題形式の工夫を心掛けていきたい。

問2 本文前半のキーワードの理解を導く内容説明問題である。当該部分の論述の核となっている考え方を正確に把握させ、以後の読解を助けることができるよう、問い方を工夫し、選択肢も判別しやすくした。正答率は高く、出題側の期待にそった結果となった。「最初の問題として取り組みやすい」「導入の設問として適切」との評価を得た。

問3 問題文前半の重要な論点の一つを理解させる理由説明問題である。習慣的行動の経験的習得という内容は、問題文後半でも踏まえられているため、この箇所の理解は後半の読解も助ける。また、それゆえ前半・後半どちらからでも解答は導き出せる。正答率はほぼ妥当な値となった。良問との評価を得たが、傍線部の読解のポイントが二つあるため、解答に時間を要したのではないかという指摘もあった。

問4 比喩的及び抽象的表現を前後の例によって理解させる内容説明問題である。本文後半への導入に当たる箇所のため、この内容の把握は重要である。傍線部を二つにすることによって、異なる二つの事柄をそれぞれ確認させることと、選択肢の構造の単純化とを図った。良問との評価を得たが、正答率は低かった。前後の例に目を向ける前に比喩的・抽象的表現そのものの意味・イメージをしっかりつかむという読解の仕方を学習させたい。

問5 本文全体を通じての筆者の主張を理解させる内容説明問題である。本文が大きく前半・後半からなるという文章構成の理解も必要となる。「必要不可欠な設問」であり「選択肢にも工夫が凝らされている」との評価を得たが、「やや負担が大きかったと思われる」という指摘もあり、正答率はやや低かった。全体の論旨を把握させる設問では、問題文の難度及び解答所要時間に配慮して、選択肢の内容をより明快にする工夫も必要であろう。

問6 本文全体を構成する主要な論点をあらためて確認させる内容正誤問題である。他の設問で取り上げられなかった重要な内容の理解を確かめる。「合致しないもの」を選ばせる形式を採ったのは、本文の内容に合致する選択肢の数を多くして読解を助けるためである。この形式は「好ましい問いとは言えない」という指摘もあるが、この形式を採用する必然性は十分にあると考える。また、この設問で二つ選ばせる形式を採ったことは、第1問全体の配点をより小刻みに設定する意味もあった。この点について「受験者の力を段階的に見ることができる」という評価を得た。正答率は、一方は妥当な値であったが、一方はかなり低かった。問題文の難度及び選択肢の表現の紛らわしさによるものであったと考える。

第2問
宮本輝の小説『寝台車』(出典『宮本輝全集第 13 巻』所収 新潮社 平成5年4月5日初版)からの出題。

以下省略





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