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大阪市立大学数学教室・談話会

多面体論の新領域/Ricardo貿易理論の一般化・要旨

塩沢由典 

リカードの国際貿易理論は、比較優位の理論として有名である。核物理学者のスタニスラフ・ウラムの「経済学の理論で自明でないものがあるか」といういじわるな質問にたいし、経済学者のサミュエルソンは一年掛けて考えたのち、比較優位の理論を挙げたという。しかし、中間財を貿易する場合、2国の設定を超えることは難しく、一般理論といえる成果はこれまでほとんど得られていない。本報告は、最小価格定理をうまく用いることにより、多数国・多数財で中間財の貿易と技術選択がある場合にも、リカードの理論が一般に拡張できること示す。賃金率単体の複体的細分としてひとつのモード分割が定義され、その分担的な各要素に対し、生産可能集合の極大面がひとつ対応する(双対定理)。これらの結果は、数学的には、多次元空間における多面体を非負の方向から見た場合の分析にあたるが、これまでそのような応用の観点からは考察されていない。経済学の理論としては、この理論は、現在ますます重要さを増している中間財の貿易理論の基礎となるだけでなく、主流の貿易理論であるヘクシャー&オリーンの理論を代替する意義をもっている。資料:塩沢由典「リカード貿易理論の新構成--国際価値論によせてII」(未定稿http://www.shiozawa.net/keizaigaku_saishin/RicardianTradeTheory61220.pdf )(『経済学雑誌』(大阪市立大学) 掲載予定)



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